![]()
今シーズン、ドルトムントからセレッソ大阪に復帰した丸岡満が苦しんでいる。 丸岡はセレッソのユースでプレーし、トップ昇格した2014年、その才能をユルゲン・クロップに評価され、ドルトムントに期限付き移籍を果たした。 173cm、64kgと小柄で卓越したスピードはないが周囲をうまく使い、2列目から飛び出していく。セレッソユース仕込みの高い技術と判断力を生かしたプレーが丸岡の特徴だ。チームでは2列目の攻撃的な選手として起用され、香川真司の影響なども受けて着実に成長していた。 そのセレッソは、昨シーズンJ1昇格に失敗した。今シーズンはJ1昇格が絶対的なノルマになる。そのために必要な戦力として復帰を要請され、丸岡も「恩返し」とばかり、セレッソに戻ってきた。 豪華なライバル、そしてサッカーの土台の違い。 だが、チームに戻ると攻撃陣の豪華さに驚いた。柿谷曜一朗、杉本健勇が復帰、リカルド・サントス、ブルーノ・メネゲウ、清原翔平、澤上竜二らが新加入し、さらに玉田圭司、田代有三、関口訓充らがいるのだ。 「すごい面子だなって思いましたね」 丸岡は苦笑したが、確かにこの攻撃陣はJ1でも十分通用する顔ぶれだ。Jリーグでの経験がない丸岡が彼らを凌駕してレギュラーになるのは非常に難しいのはもちろんだが、今丸岡は、彼らと同じ土俵に立つところで苦しんでいる。 「ドイツと日本のサッカーが全然違って、(悩みは)そこですね。チームのスタイルも全然違うので、今は試合に出るために自分探しをしている感じです」 過去、海外から帰国してから中々日本のサッカーに順応できず、苦労した選手はセレッソのOB西澤明訓を含めて大勢いる。丸岡は18歳で海外に行き、ドルトムントのサッカーが体に浸透している。若いので順応性があるが、すぐに日本のサッカーに適応できるかというとそれほど簡単ではない。丸岡は、どういう部分に日本とドイツの違いを感じているのだろうか。 ドイツと日本では守備方法が全然違う。 「日本のサッカーは、カウンターもあるけど中盤でしっかり組み立てて、パスを繋いで攻めていく感じですけど、ドイツというかドルトムントのサッカーは、ボールを取られたらガッと奪いに行って、そこから前に当てて一気に攻めるカウンターサッカーなんです。質が世界最高なので回しているように見えるけど、要はカウンターなんですよ。そのサッカーに慣れていたんで、日本のように中盤の組み立てに入ってボールを回すサッカーと守備に比重を置くやり方に、まだ慣れていない。とくに守備の部分ですよね。そこが今、一番戸惑っている部分です」 大熊清監督からは、とりわけ守備について厳しい注文が出されているという。だが、ユース時代はタイプ的には山口蛍のような守備が強い選手だった。 「そうなんですよ。ユース時代の感覚を取り戻せれば、どこでもやれると思うんですけど、まだまだですね。やっぱりドイツと日本じゃ守備のやり方も違うんです。ドイツは前に取りにいく時は全員で行くし、自分がはがされても次が来るから『はがされてもいいから行け』って感じで思い切りいけるんです。 でも日本では、自分のところではがされたらダメじゃないですか。止まらないといけないし、相手に付いていかないといけない。監督には、『1回だけじゃなく2、3回追い掛けろ。球際の強さを見せてこい』と言われるので、そこを意識してライン際のタックルとかスライディングとかしていますけど、もっと守備の意識を高めて、何回も相手に行けるようにならないといけない」 柿谷にもらった「トップ下かボランチ」という助言。 サッカーの違いに慣れていないせいもあり、ポジションも今のところ不透明だ。練習試合ではトップ下やサイド、紅白戦ではボランチとしてプレーする機会が与えられていた。柿谷からは「独特のリズム感を出せるんやからトップ下かボランチで勝負した方がいいんじゃないか」と、アドバイスをもらったというが、丸岡自身はどのポジションでのプレーを考えているのだろうか。 「自分の特徴を考えると、トップ下とかボランチが一番合っているのかなと思います。サイドはなかなかボールが来ないし、1対1で打開するのは自分の持ち味ではない。やっぱり真ん中にいて左右に散らしたり、ワンツーで崩したり、連携で崩したりして2列目から飛び出していく。そうして、運動量でかき回すのが僕の特徴です。でも、どこのポジションでやるのかということと同様に、もっとセレッソのサッカーに慣れて溶け込んでいかないといけないですね」 大熊監督「体重が2kgぐらい増えたらかなり違う」 練習試合で、もちろん丸岡は必死にプレーしている。だが、サイドに置かれると関口や杉本、ブルーノらとは守備の厳しさ、攻撃のクオリティや連携の部分で少し差が出てしまう。トップ下にはゲームメイクが秀逸な玉田、そして柿谷もいる。ボランチは扇原貴宏、橋本英郎に加え、新加入の山村和也、ソウザがおり、壁は相当に高い。 大熊監督はいう。 「丸岡は徐々にチームにフィットしてきているけど、まだ強さが足りない。センスと運動量は間違いないけど、清武(弘嗣)みたいにシビアな所に入っていく時のグッという我慢する力やもぐりこめる強さがない。たとえばブルーノは背が低いけど、厚みがあるので球際の強さとか突破力がすごい。丸岡も体幹をつけつつ、体重が2kgぐらい増えたらプレーはかなり違ってくるはず。U-23があるから、そこで実戦経験を積ませてという感じで今は考えています」 「試合に出ないと何のために帰ってきたのか」 タレントはあるが、プレイヤーとしてセレッソで戦うための力がまだ足りない。だが、求められるものがあるということは、期待の表れでもある。それは、清武や柿谷が付けていた出世番号である“13番”を与えられたことからもうかがえる。 「今は練習試合で結果を出して、必死に食らい付いていく。試合だけじゃなく、練習から要求して選手の特徴を理解して、自分のことも理解してもらうようにやっていかないといけないですし、課題の守備の意識と質を高めていく。簡単じゃないですけど、試合に出ないと何のために帰ってきたのかということになるので」 試合に出るには、少し時間が必要かもしれない。ドルトムントに在籍していたとはいえ、トップでの試合経験はほとんどないので、実戦での経験を積む必要があるからだ。その過程で、いつドルトムントの殻を破ることができるか。世界最高のチームにいたというプライドを脱ぎ捨て、セレッソでの原点に戻った時、その才能が開花するはずだ。