(ブルームバーグ): 経営再建中のシャープの支援をめぐ り、政府系ファンド産業革新機構は支援後の成長性やシャープの独立と いう点から機構の提案の方が優れているとし、シャープに受け入れるよ う訴えていく方針だ。支援には台湾の鴻海精密工業も名乗りを上げてい る。 機構の志賀俊之会長(日産自動車副会長)は10日夜、ブルー ムバーグの取材に「諦めていない。シャープにとってわれわれの案の方 がいいという気持ちがものすごくある」と述べた。また機構の場合、支 援開始後5-7年で株式を売却するため、将来的にもシャープの独立性 が保たれるという考えを示した。 シャープの再建候補は機構と鴻海の2社に絞られている。鴻 海の郭台銘(テリー・ゴウ)会長は5日、優先交渉権を得たと語った が、シャープは否定した。ブルームバーグが入手した文書によると、機 構は成長投資に使う3000億円の出資に加え液晶投資の追加資金とし て2000億円の融資枠を設定するなど、財務支援効果が1兆円を超えると 主張している。一方、鴻海が示している買収による支援総額は、関係者 によると約6600億円。 投資額で競わず 志賀会長は、鴻海案ではシャープが連結子会社となり、投じ た資金が同社の資産になると説明。「金額の多寡はあまり関係ない」と 述べ、投資額で鴻海と競争するつもりはないと話した。志賀氏によれ ば、機構案では液晶事業は本体から切り離し、機構が投資しているジャ パンディスプレイと統合して相乗効果を狙う。白物家電は東芝と統合 し、将来的に国内の家電事業の再編につなげる考えだという。 シャープの経営危機はテレビ不振などで2012年3月期に巨額 赤字を計上したことで表面化し、前期(15年3月期)も2223億円の純損 失を計上した。シャープは資産売却や人員削減によって立て直しを図っ てきたが、液晶事業の悪化により外部支援が不可避の状況となってい る。 機構は09年、日本の次世代産業創出を目的に官民で設立さ れ、総額約2兆円の投資能力がある。これまでに中小型液晶パネルのジ ャパンディスプレイや半導体メーカー、 ルネサスエレクトロニクスに 出資した。 シャープの広報担当、関喜文氏は取材に、同社は「鴻海と機 構と協議を続けている」と述べた。鴻海へのメールでの問い合わせに返 答は得られていない。 記事に関する記者への問い合わせ先: 東京 天野高志 tamano6@bloomberg.net; 東京 Pavel Alpeyev palpeyev@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先: 宮沢祐介 ymiyazawa3@bloomberg.net 中川寛之, 蒲原 桂子
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